「悔しさはどんどん募っています」今夜ウルグアイ戦の森保一監督、新しい景色に挑む決意 | ananweb – マガジンハウス

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なぜ日本のために戦うのか。それは恩返しだと断言する森保一監督。今夜のウルグアイ戦前に一読すべき、監督が掲げる“森保ジャパンが戦う意義”と現在の心境とは。

【森保一監督が語る“つながるチカラ” 3】

カタールW杯から約3か月。森保 一日本代表監督は、「日本代表の勝利のために。日本サッカーの発展のために。社会に貢献できるように」という原理原則を起点として、問題の対処法を考えるようにしていたと語る。ここではその3つ目である、“社会貢献”の観点からお話を伺った。

社会のために~応援してくれるからプレーできる。“3つの気”を届けることが恩返し。

©JFA

「批判されるというのは注目されている、試合を観ていただいている証しと、ポジティブにも受け取っています」

批判に対してもポジティブに受け止めている、という森保監督。

「大事なのは国内でサッカーがより認知されること。日常にサッカーを感じてほしいんです。そして、観ていただいている時間は、喜怒哀楽を出してほしい。一喜一憂したり、予期できない展開に興奮したり、そこで日々のストレスを発散してもらえたら。サッカー観戦をそういう時間にしてもらいたいと思っています」

森保監督の原理原則のうち、3つ目は社会貢献のために。その心を聞いて、なぜ森保監督の根幹となる部分にこの考え方があるのか、腑に落ちる人は多いかもしれない。

「日本のため、国民の方々のために我々は戦っていますが、代表活動は多くの方々の支援や応援があるからこそできることです」

このことは、日本代表というチームだけでなく、選手一人ひとりにも言えるという。

「試合で活躍した選手は、ある意味スーパースターで特別な存在として見てもらえます。それはやりがいとなり、大舞台に立つことを目標にし、叶えるべく自分を奮い立たせることができる。加えて、彼らのプレーを観にお金を払って来てくれる方々がいるから、好きなサッカーを続けられるんです。実際は、特別な存在ではなく一人の人間であることを忘れずに、活動していくべきと考えています。私たちはみなさんにしてもらうだけではいけない。お互いが支え合うべきであり、プレーを通して恩返しをしたいと思っています」

具体的なこととして、森保監督が掲げたモットーとは?

「日常にエールを送りたいんです。チームとして“元気、勇気、根気”の3つの気を届けたいと思っています。一番は元気。日常の活力になってほしい。勝敗の枠を超えたパワーを感じて、日ごろのエネルギーの糧にしてほしいですね」

元気と聞いて、真っ先に思い浮かぶのが、W杯4大会連続出場となった長友佑都選手。試合前後のインタビューで事あるごとに「ブラボー!」と絶叫し、私たち視聴者のテンションを上げ、勝利の喜びも増大させてくれた。

「次は勇気。選手は毎試合、最善の準備をして、果敢にチャレンジをしています。みなさんにも日常の一歩を踏み出すためのチャレンジをしてもらいたいんですね」

ドイツ戦で見せた浅野拓磨選手の執念ともいえる逆転ゴールは、勇気そのものと言ってもいいだろう。前回のロシア大会では招集外で帯同メンバーとしての参加となり、苦杯をなめた。《その日から今日(ドイツ戦)のために全力で準備してきた》という言葉が、森保監督の思いと重なる。

「そして、根気。日々の暮らしは楽しいだけではなく、続けなければいけないこともありますよね。選手のアグレッシブなプレーを観てもらい、諦めずに頑張ろうという継続力を持っていただけたら」

“三笘の1ミリ”でピンとくる人も少なくないだろう。スペイン戦、ゴールラインギリギリで三笘選手が折り返したボールが好アシストとなり、田中碧選手が逆転決勝弾を決めた伝説級のシーンだ。諦めない姿勢が最高の結果をもたらすことを見事に体現してくれた。

2026年のW杯では、新しい景色を見せたいです。

今大会の森保ジャパンの躍動は、日本に限らず、世界各国が興奮のるつぼと化した。彼らが与えた衝撃は、ポジティブな影響を多くの人に与えただろう。社会貢献という面では目標を達成できたといえるが、森保監督にはどうしても拭い切れない思いがある。

「カタールW杯では、喜びもありチームで成長も感じられました。ですが、最終的にはベスト8以上という目標はクリアできなかった。日を追うごとに、悔しさはどんどん募っています。次回、2026年のアメリカ合衆国、メキシコ、カナダの北中米3か国共催のW杯では、みなさんに新しい景色を見せることができるよう、時代の進化に対応しながら、個の力をもっと伸ばして成長したいです。そのなかで、勝利をより大きく積み上げていきたいと思っています」

スタンドに向かってハートマークを作ったり、深々とお辞儀をしたり。試合終了後のサポーターに対する真摯な対応も、森保監督の温かい人柄をよく表している。©JFA

森保監督は愛に満ち溢れた人だと思う。そう伝えると、「愛と表現するのは恥ずかしいですが、愛情と相手を尊重する気持ちは常に持っています」と照れた表情を見せた。多忙な合間をぬって取材に応じ、一つ一つの質問に丁寧に答えてくれた姿勢からも、森保監督の愛情が伝わってきた。勝利や利益を目標に掲げるのは当然だが、チーム作りに必要な信頼関係や求心力といった“つながるチカラ”の源は、突き詰めれば“愛”だ。それなしでは一体感は生まれない。

もりやす・はじめ 1968年8月23日、長崎県生まれ。現役時代はサンフレッチェ広島、ベガルタ仙台などでプレー。元日本代表。1993年の“ドーハの悲劇”を経験。現役引退後は広島の監督、東京五輪代表監督、ロシアW杯日本代表コーチなどを経て、2018年7月より日本代表監督。

※『anan』2023年3月8日号より。写真・日本サッカー協会 Getty Images 取材、文・伊藤順子

(by anan編集部)

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