会期:2023年6月21日(水)
会場:梅田クリスタルホール
主催:freee株式会社
会計・人事労務・業務効率化など経営を支えるあらゆる業務の最先端が一同に会するイベント「バックオフィスの日」。昨年1月に大盛況だった東京での開催をふまえ、6月21日(水)に「バックオフィスの日2023 in 大阪」として初めての大阪での開催となった。
今回は4コマ目に行われた「バックオフィス・プリンシプル〜ここでしか聞けない、あの企業の変革の裏側〜」の内容をご紹介する。
スピーカー:神山大輔(IXホールディングス株式会社)
皆さんこんにちは。IXホールディングスの神山と申します。 今日は「freee」を導入した当時の課題や、導入の決定に至った背景、導入による効果や導入してどうなったかというところを中心にお話させていただきたいと思います。
お話を始めさせていただく前に、簡単な自己紹介と会社概要のご説明をさせてください。
まず、私はIXホールディングスという会社の執行役員、CIO兼CPROでございます。CIOというのは情報システムの責任者なんですが、それに加え今年からCPROなるものを兼任しております。PRなので広報ですね。弊社の広報に力を入れないといけないということになりまして、兼任させていただくことになりました。
私は1974年生まれで、今は49歳でございます。大学を出て一番最初に入った会社がNECで、そこでは営業として7年間京橋OBPで勤務していました。30歳くらいの時にCA(コンピューターアソシエイツ)というニューヨークが本社のソフトウェアの会社に転職をしました。そこで東京に行くことになりまして、ソフトウェアの営業を15年やっていたんです。そして4年前に生まれ故郷の三重県伊勢市にある弊社にUターン転職をしました。
今はIXホールディングスで、全体の利益推進をということでやっております。やはりDXというものはもう待ったなしの状況でございまして、その辺りを引っ張っていかなければなりません。
そんなIXホールディングス株式会社の会社概要でございます。伊勢志摩を拠点として、グループ企業が結構いろんな業種、業態の事業を展開させていただいています。資本金6000万円、従業員はグループ全体で大体600名ぐらい。そんな規模の会社でございます。
今年の1月6日に日経に広告を出させていただいたのですが、実は今年の1月1日に社名を変更してIXホールディングスという名前になりました。その前までは「株式会社マスヤグループ本社」という会社でした。
皆さんの中で「マスヤ」と聞いてどれぐらいイメージを持たれる方がいるかはわかりませんが、グループ企業の説明をさせていただきます。「マスヤ」は菓子を販売しています。「伊勢萬」は伊勢神宮の前にある伊勢唯一の酒蔵です。「伊勢萬トレーディング」は伊勢神宮の参道でいろんな物品販売をさせてもらったり輸出入をしたりしている会社。「エムケイ」では高齢者への介護サービスとしてデイサービスや訪問を行っています。「志摩地中海村」は最近少しずつインスタなどで映えるスポットとして伊勢志摩に旅行に来られた若い人を中心にご利用いただけるようなリゾート事業を展開しています。 あとは「オランジェ」という結婚式場を展開するブライダル事業、観光客向けにツアーをパッケージして提供する旅行会社「伊勢志摩ツーリズム」があります。
それぞれの会社を含め今まではずっと「マスヤグループ本社」としていたのですが、どうしても「マスヤ」という名前が特に知られていて、こう引っ張られちゃうんですよね。そうではなく、 もっと地元の伊勢志摩にコミットできる変革をしていくための一役を担いたい。IXホールディングス株式会社はそんな気持ちを持って社名を変更したホールディングス企業でございます。
たとえば「おにぎりせんべい」というすごく面白い商品がございます。弊社の調査では、「おにぎりせんべい知っていますか」と西日本で誰に聞いてもほぼほぼ100パーセントの確率で「知ってます」と言われるものです。しかしどんどん東日本にいくにつれて認知度が低くなり、 東京より北だとさらに低くなっているんですね。今、東京では50〜60パーセントくらいの認知度かなと感じています。「おにぎりせんべい」を私は美味しいと思っているので、認知度ももっと高めていかなければいけないと思います。
ちょっとすみません、宣伝みたいになってしまいましたが、IXホールディングス株式会社は「おにぎりせんべい」を作っている「マスヤ」が全体の売り上げの8割を占めているようなホールディングス企業です。と、そんなところで「freee」を導入した経緯をお話しします。
「freee」導入当時の問題としてまず皆さんにお話しできるところとしましては、グループ各社ごとにオンプレミスの会計ソフトが異なっていたことです。私が転職した当初にシステムを見た際には、クラウドの会計ソフトが1つも入ってませんでした。会社によっては会計をまるごとアウトソーシングしているところもありました。個社個社で見れば今まで通りでもよかったのかもしれないですが、ホールディングスとして各社から会計の情報を吸い上げる必要がある際に、各社のフォーマットがバラバラだったり表示できるデータとできないデータがあったりすると管理が大変でした。
また、各社の担当者における業務の属人化も問題の一つです。IXホールディングスには複数の会社がありますが、各社で会計ソフトを使うのはだいたい1人か2人。例えば1人しかいない会計担当の人が長期休暇に入るとか、 突然退職してしまうようなことが発生してしまうと困るんですよね。他のグループ企業の会計担当が手伝えればいいのですが、会計システムが違うものですからそれは難しい。せっかくグループとしては会計担当が10人ぐらいいるのに、共同作業ができないような状態がもったいないですよね。業務の共通化、標準化をした方がいいんじゃないかという話になりました。
そして、これもよくある話かと思いますけれども、どうしてもバックオフィス周りのところには非常にたくさんの時間や工数がかかっておりました。例にもれず弊社もほとんどが紙ベースで、紙に申請書を書き、その紙を上長や部門長のところに持っていってハンコをおしてもらう。ハンコを押してもらいに行っても担当者がいなければそこで滞留してしまうということもよくありますよね。その後、結局最後にはその紙の内容を経理システムに転記しないといけません。それがすごく大変です。
エクセルで作ってプリントアウトして、ハンコ押してって。やはりこのご時世、そこはもったいないよねという話になりました。
さらには処理した書類の保管コストも問題点の一つです。意外と書類って溜まりますよね。事務所のキャビネットの大半が書類で埋まってしまうとスペースももったいないということで、何かシステムを作っていかなければという課題がありました。
続いて、なぜ「freee」を導入したのかということについてお話します。
最初から「freee」にしようと決めていたわけではありませんでした。当時はホールディングス内で一番大きな会社である「マスヤ」の会計ソフトに揃えたらどうかという意見がありました。確かにそれも一理あったのですが、「マスヤ」で使っていたのがオンプレミスのソフトだったため、グループ各社の業種や業態に合わせようとすると、それだけカスタマイズの費用がかかってしまうのです。「これはいかん」ということで、会計ソフトを一新することになりました。
「カスタマイズ地獄に死なないために」なんて表現していますが、カスタマイズするとずっとつきまとわれてしまうのでそれは避けたかったんです。そのためにやったこととしては、「業務にシステムを合わせるよりも、システムに業務を合わせる」ということでした。
これについては実は現場の担当者のみんなにはすごく苦労をかけた部分ではあります。各社なりにそれぞれのプロセスがありますので、本当は各社のプロセスにシステムを柔軟に合わせて運用してあげたかったというのが本音です。しかしそれをやろうとすると、やはりカスタマイズが発生してしまうケースがたくさんありまして。そのため今回はもう業界標準のツールを入れて、業務をツールに合わせていくことに社内合意を得ました。
とはいえグループ各社で業種業態は違います。それぞれに合わせてシステムをカスタマイズしてしまうと、僕としてはバージョンアップについてこられないイメージがありました。 そうではなく、バージョンアップしてもちゃんとその機能は引き継がれていけるような設定ができるようにしようということで、何製品かに絞ったんです。「SaaS型であること」と「導入実績が豊富であること」をメインで考えました。 それに加え、価格的にも中小企業でも手の届くものをという条件もありました。
また会計担当者に対しては、システムに業務を合わせてもらうゆえに、操作に1日も早く慣れてもらわないといけないし、少しでも楽に作業やってほしいという思いがあったので、UIを大事にしました。会計担当者にとっては、慣れているソフトだからこそルーチンでできるわけなんですよね。「この業務の時は、このボタン押して、このボタン押して」ってスムーズにできるわけです。でも、今回システムが変わってしまうという中で、ITが得意じゃない方にとっても直感で作業ができそうなものを採用しました。
会計業務のみならず、各種支払いの依頼や経費精算にも使っていただきたいという思いがあり、そういう意味でもUIをすごく大事にしたんです。
ここからは「freee」導入による効果についてお話します。
「マスヤ」中心にお話をしますけれども、まずはペーパーレス化が思った以上に進みました。 もともと支払関係の書類が「マスヤ」だけでも少なく見積もって月に大体100万ほどあったんです。プリントアウトし、ハンコを押すという紙ベースのやりとりが完全になくなったことはもう、目に見える効果でした。困っていた紙の保存のスペースの問題についても、書類を探す手間がなくなり、「freee」に検索をかければ出てくるようになったため、ペーパーレス化の成功は「freee」を導入した効果として特に実感しています。
また私どもは管理会計を導入しておりまして、各種データを引き抜く業務もよくございます。今までは管理会計用のエクセルを作るのに一苦労していましたが、「freee」を入れたことによって、一発変換は難しいものの少し手を加えるだけでデータを出すことができるようになりました。
続いては、「freee」導入後の定着にあたって工夫したことについてお伝えします。
工夫と言えるかどうかは分かりませんが、 まず1つ目に「freee」さんの初期導入支援というものを活用させていただきました。要は、プロに手伝ってもらったんですね。
「マスヤ」の規模ですと、「freee」を使うには規模がちょっと大きすぎるかなとも思っていました。しかし 「できるよ」と営業の方にも言っていただき、導入支援をお願いすることができました。実際に我々の支援に入ってくれた会社さんが満足してくださって、無事にプロジェクトを終えて「freee」を導入することができたわけです。
導入支援をお願いして何が良かったかっていうと、やはり「導入プロジェクトの進行管理」ですね。 「freee」を導入した時期にはコロナ禍になっていたため、実際には導入プロジェクトの担当者とはお会いしたこともないんです。その中でプロジェクトの進行管理をやってくださって、「いついつまでに次、ここまでやってね」「次、ここまでやってね」と明確に指示してくれて、フォローしてくださったんです。
また、既存業務の棚卸しも手伝ってもらいました。我々だけでももちろんやるんですけど、棚卸しにはちょっとしたコツがあったことも実感しています。棚卸しをして、新しい業務を作っていかないといけません。「業務をシステムに合わせていく」ためにあんまり無茶はできないもんですから、いい具合にシステム構築していくためのヒントを導入支援でいただけたというのが非常に良かったです。
いつもであれば我々はこうした支援を受けずに、独自でソフトを導入することが多いのですが、今回はプロに入ってもらってよかったと思います。
もう1つ工夫したこととしては、これは当たり前のことかもしれませんが、「社員への説明コストを惜しまないこと」です。
これについては「freee」ではなく、それまでに別のソフトを導入した際に感じたことなのです。やはり実際に使う従業員の皆さんにはきっちりソフトについて説明しないと使われなくなってしまうということを感じておりまして。そのため「freee」を導入する際、僕は説明に力を入れ、少人数での説明会を何度も実施したり、説明会に来られない人にもレクチャー動画を作ったりしたんです。
動画を作ったのもよかったのですが、やはり僕の中では説明会を開いたことがよかったかなということは実感していますね。動画はどうしても一方通行なので、理解できなくてもそのまま通り過ぎちゃうんですよね。わざわざ巻き戻して見るかというと、そんなこともないと思います。そのため、説明会をたくさん開いてよかったです。
「freee」の導入にあたっては補助金も活用したので、申請についてもお話します。我々が
「freee」を導入するときは「IT導入プログラム」を使わせていただきました。弊社が感じたこととしては、伴走してくれる会社が親切丁寧でない場合はなかなか難しいなと思っておりまして。経験や実績の多いIT導入事業者を選ぶことが大切です。
実際に弊社は、補助金の申請に1回落ちているんですよ。やはりどれだけ伴走してくれる会社さんが詳しく見てくれるかということはすごく大事です。 うまく導いてくれるようなIT導入事業者さんを選びたいものですね。
あとは入力内容のミスや漏れにも注意が必要です。先ほど申し上げたように、1回は不採択になってしまった経験があるのですが、なぜ不採択になったのかという理由は教えてもらえないんです。おそらく入力ミスか記入漏れがあったのか分かりませんが、注意が必要でした。
また、申請の時期が遅くなればなるほど採択率が落ちるので、早めに着手することをお勧めします。私たちも不採択になったときは遅かったんです。申請期間が始まった時に着手することでかなり採択率が上がると、はっきりしたことは分からないものの肌感覚としてはそう思っています。
ここからは本日のお話のまとめです。
ホールディングス全体の中でも「マスヤ」を中心にお話させていただきましたが、各社ごとに「マスヤ」での導入経験が生きています。我々の決断として、もうオンプレミスから脱却してSaaSのものに変えていこうと決めたのがよかったです。
ソフト導入へのフローとしてプロに伴走していただくなかでも色々ありましたが、システム構築を積み重ねていくことで運用の導入や運用のノウハウがだんだん溜まってきてまして、 完璧ではありませんが順調だと言えます。もう少しお時間があれば、グループ企業の他の業種、業態の苦労話もしたいのですが、今日は順調ですということだけ言わせていただきます。ご清聴ありがとうございました。