December 6, 2022 | Culture, Art, Design | 名作絵本図書館
テーマ&ジャンル別に名作絵本をセレクトしました。子供たちにとにかく人気の動物が猫と熊。愛らしいルックスに加え、ほのぼのした存在感が安心を誘うのかもしれません。

子供たちは動物が大好き。中でも猫と熊は絶大な人気を誇り、世界中で猫と熊をモチーフにしたキャラクターも多数生まれている。ぬいぐるみのようにフワフワな体毛と丸い顔、つぶらな瞳が子供を惹きつけるのでしょうか? 絵本の世界も例外ではなく、絵本の中で描かれる猫と熊は多い。人気ゆえか擬人化されていることも多く、子供たちの共感を呼ぶストーリーも魅力のひとつだ。
『あおい目のこねこ』丸く塗られたあおい目がチャーミング!

デンマークの人気絵本作家、エゴン・マチーセンの代表作。おなかがすいた、あおい目のこねこが「ねずみのくに」を探す旅に出る。墨一色の絵筆で描かれたあおい目のこねこは瞳だけがブルーで、それが強烈な印象を残す。ラフなタッチは、今で言うヘタウマな画風だがそれが漫画的で愛嬌があり、愛着が持てる。はりねずみやいぬなど、そのほかの登場キャラクターも魅力的。
『あくたれ ラルフ』アメリカで人気のいたずら猫ちゃん。

アメリカで1976年に登場以来、あくたれ猫ラルフのシリーズ絵本は20冊ほど登場し、TVアニメ化もされるなど本国では、今も高い人気を集めている。絵本を読めばそれも納得。飼い主のセイラに次々といたずらをしかける、まさにあくたれの困ったラルフだが、どこかかわいくて(絵もあまりかわいくないのだけれど)憎めない。作者が飼い猫をヒントにした物語は猫への深い愛情でいっぱいだ。
『スキャリーおじさんのたのしい ものしり えほん』ユーモアあふれる言葉辞典!

手がけた絵本は300冊以上。世界中で翻訳され、発行部数は2億冊を超えたといわれるリチャード・スキャリー。1980年に発行された『ハックルとローリーものしりえほん』の新装改訂版であるこの本では、身近な物の名前、色や数など700ほどの単語がイラストの中にぎっしり。ただ語彙を増やすための言葉絵本ではない。絵本は面白くあるべきという彼の信念どおり、ユーモアにあふれている。
『100万回生きたねこ』ひとつの命の大切さを知る物語。

100万回生きて100万回死んだ猫は、泣いたことも愛したこともなかった。あるとき一匹の白い猫と出会い、初めて自分より大切なものを見つけたとき…。生まれた意味を問いかけるこのロングセラーは、絵本は子供だけのものじゃないと世に知らしめた一冊。佐野洋子の絵本には、読む者の年代によって心への響き方が違う不思議さがある。ほかにも『空とぶライオン』『おじさんのかさ』など。
『ちいさな ねこ』石井桃子が紡ぐ、子猫の日常。

まずミントグリーンを背景に、しっかりとこちらを見据えたこねこの表紙が美しい。家を飛び出した小さなこねこが出会うのは、乱暴な子供や自動車、大きな犬。どこもかしこも危険がいっぱいだ。石井桃子が無駄のなく、読みやすい文章で大きな世界と対峙する、こねこの小さな冒険を的確に描写していく。動物観察に長けた横内襄による挿絵も、猫の生態を実にリアルに切り取っている。
■ 愛らしい熊の本
『はなを くんくん』ふかふか動物たちと描く春の喜び。

アメリカでは%949年に発行されたロングセラー。モノクロで描かれる雪深い森、冬眠中の動物たちが突然鼻をくんくんさせて目覚めていく。何かが始まるワクワク感と、最後にパッと咲く鮮やかな色が読む者を笑顔に変える。パリ生まれの画家、マーク・シーモントが描く動物たちのふかふかの質感や生き生きとした表情からも、原題『THE HAPPY DAY』の意味が感じ取れる名作。
『くまのコールテンくん』こんな友達、ほしかったんだ!

デパートで売れ残っているくまのぬいぐるみのコールテンくんは、ボタンも取れた寂しい姿。失望感とスリルを乗り越えて訪れる最大のハッピーエンドにホッと和める。女の子のリサも素直で愛らしいし、コールテンくんがたびたび繰り返す「ぼく、ずっとまえから〇〇したいなあっておもってたんだ」というひとり言は、どんな些細なことにも幸せを感じられる心の豊かさを教えてくれる。
『マーシャとくま』強さとは賢さ、なのです。

ロシア、ポーランド、チェコなどの絵本を数多く手がけた内田莉莎子の翻訳。森で迷子になり、くまに捕らわれた賢い女の子マーシャが、知恵を絞って家に帰るまでをリズミカルな言葉で描く。挿絵の数は多くないがさすがロシアの巨匠、E・ラチョフ。一枚一枚に絵画のような重厚感があって、くまの家やガウンのデザインも味がある。文章ページの装飾にもロシアの伝統美を感じさせる。
『しろくまちゃんのほっとけーき』ぽたあん、ぷつぷつ、くんくん、ほいっ。

絵を担当したわかやまけんのほか、児童文学作家の森比左志、児童劇の脚本家わだよしおみ、こぐま社の佐藤英和と、子供の世界を知り尽くした4人の共作であるロングセラーシリーズ「こぐまちゃんえほん」。中でも一番人気のこの一冊は、ホットケーキが焼き上がるまでの過程を描いたページが特に印象的。単純化されたデザインの登場人物は、子供の想像力でいろんな表情に映る。