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魚を食べたから“文化”を手に入れた?【千葉工業大学学長・松井孝典氏が語る「ロケットで地球外の生命をみつける意義」その3】

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魚を食べたから“文化”を手に入れた?【千葉工業大学学長・松井孝典氏が語る「ロケットで地球外の生命をみつける意義」その3】

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学長であり東京大学名誉教授の松井孝典氏は、世界の地球科学者から注目を集めた日本の惑星科学の第一人者である。

ロケット事業を展開する堀江貴文氏は、松井氏が推進する「ロケットで地球外の生命をみつけるプロジェクト」について話を聞いた。松井氏との対談は「20万年前の地球での気候変動」まで話がさかのぼり、「ホモサピエンスの誕生」から「人と微生物の関係性」といった知的なキーワードの数々に、堀江氏の興奮は最高潮になった。

宇宙と文明の研究の発端とは

堀江 でも、なんで突然、農耕が始まったんですかね。

松井 それは、私もいろいろ仮説を考えました。そもそも、ホモ・サピエンスはホモ族の中でも特に変わっているんです。大脳皮質の中にニューロンを接続させて、外界を通して脳の中に内部モデルを作るようになりました。これを普通の言葉でいうと「文化」ということになるんですが、そういうところがネアンデルタール人と違うわけです。では、なぜそうなったのか?

堀江 なぜなんですか?

松井 私の仮説では「DHA(ドコサヘキサエン酸)」なんじゃないかと。魚を食べ始めたからなんじゃないかと思っているんです。魚を食べるとニューロンの接続が良くなることが、実際に赤ちゃんの実験で確かめられていますから。

堀江 なるほど。

松井 今から20万年くらい前に気候変動があって、東アフリカにいたホモ・サピエンスは南アフリカに下った。その頃から魚を食べ始めたんじゃないかと思っているんです。そして、その後、気候が戻ってきて5万年くらい前になると、ホモ・サピエンスは「出アフリカ」といってアフリカ大陸から移動していきますが、そのときに海岸沿いを通っているんです。

堀江 はいはい。

松井 この時代には、もう圧倒的な文化的変容が起こっていて、骨角器などを作り出していた。モリなどで魚類を盛んにとっていたんです。

堀江 海岸沿いを進んでいるわけですからね。

松井 そして、ちょっと時代は飛んで1万3000年くらい前になると、氷河期から間氷期に移ったため人口がどんどん増えていく。そこで、人口増に対応するために採集したものを栽培することを思いついたんじゃないかと考えているんです。ところが、1万2000年くらい前に「ヤンガードリアス」という寒の戻りがあって、地中海東部沿岸のレバントなどに住んでいた人のほとんどは住居を捨ててしまった。その人たちがどこに行ったのかはわからないんです。一方で、トルコには1万2000万年くらい前のギョベクリ・テペ遺跡がある。だから、私はレバントに住んでいた人たちが、ギョベクリ・テペに移っていったんじゃないかと推測しているんです。

堀江 そのへんの環境は良いんですか?

松井 いや、それほど良くないんですよ。ユーフラテス川の上流で、800mくらいの高地です。

堀江 でも、不思議ですよね。そんなところに世界最古の農耕の遺跡があるかもしれないというのは。

松井 そうですよね。なぜ、私がこういう宇宙と文明に興味を持ったかというと、今から2万年前から5000年くらい前にかけての空は、今とはまったく違っていたんです。今から2、3万年前に彗星の分裂が起こっていて、その破片が地球に接近していた。当時の空には今に比べて彗星が頻繁に現れたり、太陽に接近して爆発することが盛んだった。そして、5000年くらい前に分裂したのが、冒頭で話したDESTINY⁺が調査する小惑星フェートンです。

堀江 そうなんですか。

松井 では、そうした空の異変を人類は何で記録しているかというと神話なんです。彗星の分裂や、その破片が火球になって地球に降ってくる現象を神話として表現しているんですよ。

堀江 ソドムの街なんかがそうなんでしょうね。
(*ソドム=旧約聖書に出てくる街。空から降ってきた硫黄と火によって滅ばされたとされている)

松井 ということで、私はそれをきちんと調べたかったというのが、宇宙と文明の研究のそもそもの発端です。例えば、湖や沼の堆積物は1万年くらい前までの綺麗な年縞があるんです。すると、昔の天体衝突の時代の層があって、中には宇宙的な物質が入っているかもしれない。

堀江 そうですね。

松井 有名なギリシア神話に「パエトーン」ってありますよね。実は、あれがフェートンの分裂を書いたものなんじゃないかと思っているんです。

堀江 なるほど。じゃあ、DESTINY⁺でのフェートンの探査は楽しみですね。

松井 そうですね。

堀江 そういえば、成層圏で微生物を集めるプロジェクトの話ですけど、うちのロケットも使ってくださいよ。

松井 それは値段次第ですね(笑)。

堀江 うちは全然、高くないですよ。

松井 でも、打ち上げは1度だけじゃなくて、何回もやりたいので……。

堀江 じゃあ、スポンサーを見つけましょうよ。スポンサーがダメならクラウドファンディングもありますし。それを今度、提案させてください。

松井 わかりました(笑)。

堀江 あと、トルコのギョベクリ・テペ遺跡にも行ってみたいです。ぜひ、お願いします。

松井 はい(笑)。

堀江 いやー、今日はめちゃくちゃ面白かったです。本当にありがとうございました。

松井 こちらこそ、ありがとうございました。

その1はこちら

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松井孝典(Takafumi Matsui)
千葉工業大学学長、東京大学名誉教授
1946年生まれ。理学博士。専門は地球物理学、比較惑星学、アストロバイオロジー(宇宙生物学)。1986年、学術誌『ネイチャー』に海の誕生を解明した「水惑星の理論」 を発表し、世界の地球科学者から注目を集めた。日本の惑星科学の第一人者。

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