マーケター・経営者は必読!話題のnote「【1時間で分かる】P&G流マーケティングの教科書」著者Marketing Demo代表取締役の石井賢介氏にインタビュー

皆さんは「P&Gマフィア」という言葉を聞いたことはありますか。“マフィア”と聞くとちょっと物騒なイメージですが、これは誉め言葉。世界最高峰のマーケティング先進企業P&G出身の超優秀マーケターを「P&Gマフィア」と呼びます。

USJの業績をV字回復させた森岡毅さんや、ニュースアプリSmartNewsをユニコーン企業に成長させた西口一希さんなどもP&GのOB。ヒットの裏にはP&Gマフィアが席巻していると言っても過言ではありません。

今回インタビューさせていただいたのは、そんなP&Gマーケティング部門のOBであるMarketing Demo代表取締役の石井賢介さん。

石井さんの執筆したnote「【1時間で分かる】P&G流マーケティングの教科書」は、公開から瞬く間に驚異的なPV数とスキを獲得。BIZALOT編集部でも公開当時から「このnoteがスゴイ!」と話題になっていました。

今回はそんな石井賢介さんに直接取材!マーケターはもとより多くの人が感銘を受けている同noteを書くに至った経緯、P&Gでの経験や今後の展望などについて伺いました。

「社長になりたい」が原点。トレーダーからP&Gのマーケターへ転身

――石井さんは東京大学卒業後、住友商事に入社。その後P&Gジャパンに転職されたそうですね。

石井賢介さん(以下石井):はい。大学卒業後は総合商社・住友商事に入社しアルミニウム地金のトレーダーをしていました。入社2年目には数百億円規模の取引を成立させるなど、今振り返ってもなかなかの結果を残せていたと思います。

トレーディングの仕事自体はとても面白かったのですが、僕は学生時代から漠然と「社長になりたい!」と考えていたんですね。このままトレーディングの仕事をして実績を積んだとしても、すぐには社長にはなれない。それならゼネラルマネジメントできる企業へ転職しようと考えるようになったのが、入社から丸2年経ったときのことです。

――でも住友商事のトレーディングと転職先であるP&Gのマーケティングは、随分畑違いのように感じますが…。

石井:そうですね。まったく違います。転職先の選択肢のなかには外資系のコンサルティング会社や金融機関などがありましたが、目に留まったのがP&Gのマーケティングでした。

当時の僕はマーケティングが何なのかよくわかっていなかったですし、P&Gがマーケティングで有名な会社だということもその時に知ったほど。ただ「新商品を作りヒットを生み出す仕事ってなんだか面白そうだな」と、そんな期待感を持ちながらP&Gに転職を決めました。

――石井さんはP&Gのマーケティング本部にて「ファブリーズ」や「ジョイ」などのブランドマネジメントを担当されたということですが、“ブランドマネージャー”とはどんなお仕事なのでしょうか。

石井:一般的な企業は事業の単位を“営業部”や“財務部”など横串で切っていると思うのですが、P&Gは“ファブリーズ事業”や“ジョイ事業”など各ブランドを最小単位として、PLもBSも管理する「ブランドマネジメント制」をとっています。P&G という大きな会社の中に、あたかもブランドごとの小さな会社をたくさん持っているようなかんじですね。

ひとつひとつのブランドが独立して経営責任を任されているので、各ブランドが最適な行動をとることができます。そのブランドの責任を持つ立場の人(管理者)がブランドマネージャーです。

――ブランドマネジメント制は大きな企業だからできることなのでしょうか。中小企業でもできますか

石井:できるかできないかで言えば、できます。ただその会社がひとつのブランドならば、やる必要はないですよね。P&Gのブランドマネジメント制を見習って同じことをするのが正しいのではありません。会社の規模や仕組み、商品数などによって必要なシステムは異なりますよね。

――なるほど。石井さんは毛色の異なる職種から転職されましたが、マーケティングの知識は実務から学ばれたのですか。

石井:もちろんマーケティング関連の書籍も読み漁りましたが、やはり現場でマーケティング思考を学んだことが大きいです。とはいえ、それはマニュアルというよりカルチャーに近いもの。P&Gには過去から脈々と受け継がれているプロセスや仕組みがあるのです。

P&Gのマーケティングは、中にいる人間にとっては特別なことをしている感覚はありません。しかし他社のマーケターや知人と話しているうちに、ほかの企業では高い価値を持つ知識だということを実感しました。P&Gの仕組みに乗っかれば、新卒で入社したばかりの駆け出しマーケターでも80点90点は取れる。それがP&Gのマーケティング思考の肝なのです。

――石井さんが執筆されたnote「【1時間で分かる】P&G流マーケティングの教科書」に、そのマーケティングの思考法が、詳細にわかりやすく書かれていますね。

https://note.com/141ishii/n/na578fec5ef84

石井:右も左もわからなかった駆け出しマーケターだった自分が参考にできるような、マーケティングの教科書のようなものがあればいいなと思ったのが、noteを書いたきっかけです。マーケティングの知識をどこかにパッケージして誰もが無料でアクセスできれば、もっとマーケティングが身近になると考え、誰が読んでもわかりやすい文章を心がけて執筆しました。

――マーケターだけでなく、私のように他業種の人が読んでも有益な情報が満載で、折に触れて読み返したいと思う内容でした。

石井:たくさんの方に読んでいただいているようで、2020年のビジネスnoteで一番読まれた記事だそうです。このnoteがバズったことによって、より多くの方にマーケティング思考の重要性をわかっていただけたと思いますし、Marketing Demoという会社のことも知ってもらえましたね。

目指すは「マーケティングの民主化」

――『Marketing Demo』を創業されたのは、こういったマーケティング思考を世に広めたい、発信していきたいという思いからなのですか。

石井:それもありますが、大前提にあるのは学生時代から持っていた「30歳になったら社長になりたい」という漠然とした思いですね。いざ30歳を目前に、「P&Gで出世をしたいのか、思い切って自分のやってみたいことをやるのか」考えた結果、それならば自分で会社を持ちたいと思ったのが独立の大きな理由です。

そして2020年。30歳になる1か月前に、テクノロジーと仕組みの力でマーケティングを民主化し、どんな会社でも最高のマーケティングができるようお手伝いをする『Marketing Demo』を起業しました。

社名のMarketing Demoの“Demo”は、「お手本を見せる」Demonstration(デモンストレーション)、そして「民主化する」Democracy(デモクラシー)のW ミーニングです。

我々は、P&Gで学んだことをパッケージ化して販売するわけではありません。これまでに培った知識や経験を進化させて体系化してお手本を見せることで、マーケティングの力を体現します。これがひとつ目の“Demo”、Demonstration「お手本を見せる」です。

具体的にはマーケティングのソリューションツールの開発・販売のほか、クリニックの運営や自社商品開発を行います。つまり自社ビジネスを展開し成功させることで、お客さまにしっかりとしたDemonstrationを見せたいと考えています。結局自分たちのビジネスが成功していることが最もお客様への説得力になると考えています。

そしてもうひとつの“Demo”は、より多くの人がマーケティングをできるようお手伝いするDemocracy「民主化する」です。マーケティングが必要なのは大企業だけではありません。中小企業や小さなお店にもマーケティングは必要です。ただ小規模になればなるほど人数や財力などは限られます。だからこそ、誰でも使えるマーケティングの仕組みをつくり“マーケティングを民主化”したいと考えています。

その一環として新たにリリースしたプロダクトが、リサーチの民主化「リサーチDEMO!」です。

――リサーチの民主化…ですか?

石井:はい。BtoCビジネスをしている大企業は、当然のように消費者調査(顧客インタビュー)をしています。しかし顧客インタビューには莫大な時間と費用がかかるんですね。結果として、大企業しか消費者の声を聞けていない現実がある。どんな小規模な企業も消費者が何を求めているかを知らなければならないのに、なかなか聞く場が持てなかった。僕はP&G時代から、顧客との対話不足が日本のイノベーションを止めていると課題に感じていました。

そこで弊社では「リサーチdemo」というプロダクトを開発し、リサーチの民主化、つまりどんな企業でも消費者と話せるような体勢を整えたんです。今まで成しえなかった安価でスピーディーなリサーチを実現し、発売2か月ですがありがたいことに多くの企業からご支持をいただいています。

今後は、今まで消費者調査をしたかったけれど諦めていたという企業や、社運をかけた商品開発を考えているお店など、多くの方に利用してほしいですね。

――なるほど。noteの中にも石井さんがP&G時代に消費者調査をして得られた消費者の本音エピソードが書かれていましたね。

石井:はい。大事なのはWHO(フー)を理解することではなく、不経済・不便・不都合・不満・不安など、人が解消したいと感じる”不(フ)”を理解すること。それはアンケート調査ではなかなか導きだすことができません。マーケターは、本当に必要としている人のリアルな声を聞くべきなのです。僕は「 リサーチDEMO! 」で顧客インタビューがもっと身近になることを願っています。

――ほかに今後何かやってみたいことはありますか

石井:顧客の声を聞いていると、新しくやりたいことやアイディアが日に日に増えていきます。まだ案件化できていませんが、優れた技術を持ったブランドの事業継承にも興味がありますね。例えばポテンシャルは高いけれどさまざまな理由で全国区になれない商品や、ある地域で人気な商品だけど後継者がいないなど、事業を買い取らせていただいて我々が全国区にするということもやってみたいと思っています。この記事を読んで興味を持っていただいた方はぜひご連絡いただきたいですね。

――では最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

石井:世の中はマーケティングへのニーズが高い一方で、マーケティングへの理解度が低いと感じます。マーケティング戦略を練るだけではお金になりません。実行しなければ売り上げに繋がらないわけです。つまりマーケティングは、投資的な発想が必要です。

各企業によって抱えている問題は多様で、マーケティング部門のカタチを変えたいという企業もあれば、個別ブランドのマーケティング戦略をつくりたいという企業もあります。余程のことがない限り、それまで経営を続けてきた会社の持つ体制や不文律のようなものを壊す必要はないと思いますが、そこにマーケティングのプロセスやエッセンスをどのように加えるかを考えることが重要なわけです。

僕は、必ずしもマーケティングコンサルティングを雇う必要はないと思っていますが、手前味噌ですが我々がお手伝いしている顧客の皆さんは、マーケティングの思考プロセスで他社にない差別性を見出しています。

どんな会社でも仕組みと技術の力でマーケティングを使えるようになれば、世の中が一歩前進するはずです。そのお手伝いができれば幸いですね。

――マーケティングについて何の知識もない私ですが、石井さんが執筆されたnoteを夢中で読ませていただきました。そして今回石井さんにインタビューさせていただきながら、執筆や取材などこれらすべてが、きっと石井さんのマーケティング戦略なのだろうと感じ、感動を覚えたほどです。大変興味深い時間となりました。ありがとうございました

株式会社Marketing Demo
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仕組みの力で、どんな会社でも最高のマーケティングが出来るように。

技術による商品の差別化が難しくなった時代に、マーケティングを通じて顧客の求めているものを理解していくことが競争力を持つうえでますます重要になります。
しかし、世の中全体でマーケティングが必要とされている一方で、多くの企業が自社でマーケティングを望むように活用しきれていない実態が存在しています。

「町のパン屋さんでも世界最高峰のマーケティングが出来るように」

Marketing Demoは誰しもが最高のマーケティングができる世界を目指し、Marketing(マーケティング)を、Demonstrate(お手本を見せる)、及びDemocracy(民主化)するための仕組みを作り上げていきます。

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