「ギャルソン」勢の創造性や“お笑い隊長”のギャグはやっぱり鋭かった 2023-24年秋冬メンズコレ取材24時Vol.7

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 2023-24年秋冬コレクションサーキットは、メンズからスタート。「WWDJAPAN」は現地で連日ほぼ丸一日取材をし、コレクションの情報はもちろん、現場のリアルな空気感をお伝えします。担当は、前シーズンのメンズと同様に大塚千践「WWDJAPAN」副編集長とパリ在住のライター井上エリのコンビ。パリ・メンズ中盤のこの日は「コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME DES GARCONS HOMME PLUS)」や「ジュンヤ ワタナベ マン(JUNYA WATANABE MAN)」 というギャルソン勢に加え、お笑い隊長の「メゾン ミハラヤスヒロ(MAISON MIHARA YASUHIRO)」も登場します。

10:00 「ジュンヤ ワタナベ マン」

 パリ・メンズ4日目は、フィレンツェから続くメンズサーキットの中盤ということもあり、気力体力共に踏ん張りどころです。しかし、4日目の朝に参加した「ジュンヤ ワタナベ マン」 のショーを観ると一気に頭が冴えて、疲れなんて吹っ飛びました。コラボ祭りとなった今季は、直球にかっこいい!

 出発点となったのは、ベルリンを拠点にするブランド「インナーラウム(INNERRAUM)」のクリエイション。モーターサイクルに使われるプロテクターの部品など、異なった背景を持つ材料を組み合わせて、新しいものを生み出す同ブランドに共鳴したといいます。「ジュンヤ ワタナベ マン」のアーカイブに現在のフィルターを通し、洋服を解体・再構築したフィットスーツが序盤のルックを占めました。「インナーラウム」とのコラボレーションはバッグだけに及ばず、ジャケットやベストにマルチポケットとして取り付けられて一体化。複数のアーカイブ作品を組み合わせて一着に仕上げた複雑な構造のウエアは、ファスナーやハーネスのディテールにより機能性を極限にまで高めています。

 ワークウエアやスポーツウエア、フットウエアブランドとの多岐に渡るコラボレーションで構成したコレクションは、黒を基調にシルエットはすっきりとミニマルで、洗練されたアーバンウエアに帰着しました。異なる美学と歴史を持つブランドが混在しながらも、人種のるつぼのように共生して一つの美学を形成しているように見えます。ビッグネーム同士が引き起こす化学反応に心が震えた朝となりました。

 「インナーラウム」のほかに、国内で販売予定のコラボレーションのブランドリストは以下の通りです。「オークリー ファクトリー チーム(OAKLEY FACTORY TEAM)」「ニューバランス(NEW BALANCE)」「シメク(SIMEK)」「リーバイス(LEVI’S)」「カーハート(CARHARTT)」「ミステリーランチ(MYSTERY RANCH)」「ホグロフス(HOGLOFS)」「パレス スケートボード(PALACE SKATEBOARDS)」「カリマー(KARRIMOR)」「アルファ インダストリーズ(ALPHA INDUSTRIES)」「ティンバーランド(TIMBERLAND)」「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」「チャンピオン(CHAMPION)」。

11:00 「ポール・スミス」

 本日は交通機関が通常通りに復活しているため、移動も安定しています。ほっ。そんな平常心で臨んだ「ポール・スミス(PAUL SMITH)」のショーは、いつも通りの安定感。3つボタンのシャープなスーツで開幕すると、以降は英国調のテーラリングをサイドスリットやコクーンシルエットのアウターで柔和なフォームにアレンジします。シックなトーンのカラーもあれば、ブランドらしいコバルトブルーやモーブやベビーピンクといったプレイフルなカラーもあり、シグネチャーストライプのアイテムももちろん登場します。首から下げたフラップ付きバッグは「マルベリー(MULBERRY)」とのコラボレーションで、コンビカラーのコントラストが、秋冬らしい装いのアクセントとして映えました。終始安定していたものの、欲を言えば、もっと「ポール・スミス」らしい遊び心も見てみたかったのが正直なところです。

13:30 「メゾン ミハラヤスヒロ(MAISON MIHARA YASUHIRO)」

 逆に、遊びが過ぎるのが「メゾン ミハラヤスヒロ」です。最近はお笑い隊長としてのポジションを確立しつつあり、今シーズンもどんな仕掛けが待っているのか早くもワクワクします。この日の気温は極寒で、寒さに震えながら会場に到着すると、スタッフの方が「どうぞー」とほうじ茶を持ってきてくれました。助かります。ありがとう、スタッ……三原康裕デザイナーじゃないか。早すぎますよ、登場が。周囲を早速笑わせますが、50歳の本人は「ショーはかっこいいから。だから、ショーはかっこいいから」と繰り返し強調します。

 今シーズンは“模倣と本物”の境界線に面白さを見出し、コレクションで表現しています。一見すると着古したワークウエアのようなのに、中綿を入れてパファー仕立てにすることで、どこか愛らくユニークに見えます。中綿でパンパンになったバケットハットは、今シーズンを象徴するアイテムになりそうな存在感。さらにレザーは全てフェイクレザーに切り替え、過去から使い続ける“吹き付け染色”を施すことでリアルの質感を再現します。終盤には、「コウタ オクダ(KOTA OKUDA)」とコラボレーションしたドル紙幣アイテムも披露。得意のドッキングは控えめに、脱構築なシルエットと素材感で強さを主張しながら、「ミハラ」流のユーモアでまとめたコレクションでした。

 そして、フィナーレです。何か来るのは分かっていましたが、今回も大量の紙吹雪が舞いました。ショーって感じがして楽しいなと視線を上に向けると、スタッフ数人が紙吹雪をわしづかみにし、何度も何度もぶん投げています。周囲をよく見ると、地上にいるスタッフもゲストの背後から紙吹雪を投げ続けているではないですか。その様子が気になって、フィナーレどころではありません。最後は、三原デザイナーも紙吹雪を投げながら現れました。かっこいいショーにオチをつけるお約束は、今シーズンも健在でした。

14:30 「ディオール」

 逆に、終始かっこいいを貫いたのが「ディオール(DIOR)」でした。ショー会場であるコンコルド広場は、見たこともないほどの人だかり。来場するBTSのJ-HOPEとJIMINのファンで溢れかえっています。それでも、「ディオール」はオーガナイズはしっかりしているので、来場者用の入場口がセキュリティによって確保されており、人混みをかき分ける必要なく入れるので安心です。

 ショーには、詩を朗読する巨大スクリーンの映像と音声、クラシックの生演奏が流れる中を、柔らかなシルエットのルックが続々と登場しました。美しいテーラリングがカジュアルと調和し、柄物が少ない落ち着いたカラートーンで彩ります。モデルがゆっくりと歩く演出も含め、とてもポエティックで静かに響きました。

16:00 「クレージュ」

 「クレージュ(COURREGES)」は、マレ地区にある展示会場でコレクションを披露しました。ニコラス・デ・フェリーチェ(Nicolas Di Felice)=クリエイティブ・ディレクターが開拓するポストモダンな世界観は、若い世代やLGBTQコミュニティの心を掴み、彼が就任してからの約2年間で急成長を遂げています。パリの本店と新店舗のマレの旗艦店は、いつ行っても来店客で賑わっています。今季はブランドの顧客層である若い世代に向けた、オフィスウエアを打ち出しました。

 ニコラス・デ・フェリーチェは、テーラードジャケットを、スカートを重ねたシネ素材のスリムなスラックスと合わせて、古典的なスーツルックをコンテンポラリーに仕上げました。ジャケットの肘にはスリットを入れ、ジッパーの開閉でオープンスリーブになる仕様。これは、常にスマートフォンのカメラの監視下にあるSNS時代の閉塞感をポジティブに捉え、ジャケットを着用したままスマートフォンを使いやすくするための機能。アクセサリーもニコラス・デ・フェリーチェが取り組む幾何学的なシェイプの探求に臨めば、まだまだ伸びしろがありそうです。会場でニコラス・デ・フェリーチェを見かけたものの、照れ屋なので写真はNG。今度はニコラス・デ・フェリーチェを撮影したいです。え?ニコラス・デ・フェリーチェって言い過ぎですか?なんとなく彼の名前を言う時って、必ずフルネームで言いたくなるんです。特に“フェリーチェ”の部分がかわいいので。他にも常に”フルネームで言いたくなる人”、探しています。

17:00 「コム デ ギャルソン・オム プリュス」

 ドキドキします。「コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME DES GARCONS HOMME PLUS)」のショーはいつだってそう。セレブをパパラッチできるかどうかのドキドキや、ゲストモデルを撮り逃さないかどうかのドキドキではなく、どんなクリエイションが登場するかの緊張感です。こういう瞬間に立ち会えると、遠路はるばるファッション・ウイークの取材に来てよかったなと噛み締めます。

 ショーがスタートすると、いきなり肩先が尖ったスクエアショルダーのテーラリングが登場しました。なんだこれは。以降も、こぶのように膨らんだパーツや、筒状にぶら下がるパーツなど、テーラリングの固定観念をどんどん破壊していきます。今シーズンは、普遍的なスーツをそぎ落としてミニマルにし、ブランドアイデンティティーを浮き上がらせるクリエイションが多数です。でもこのブランドは、時を重ねることで身に付いていくものを削ぎ落とさず、ありのままを受け入れ、血肉としてに取り込んでいくのを表現しているのではとショーの最中に推測しました。結果、全然違いました。詳しくはリポートをご覧ください。でも、こういったクリエイションに向き合う緊張感を与えてくれるブランドは、われわれにとって非常にありがたい存在です。

20:30 「ケンゾー」

 本日最後のショーは「ケンゾー(KENZO)」です。会場はコンサートホールのサル・プレイエル(Salle Pleyel)で、ステージ上には生演奏を行うのであろうセットを組んでいて期待が高まります。開演時間になると、クラシック楽器で洋楽をカバーする1966カルテットの4人が登場。ザ・ビートルズ(THE BEATLES)の楽曲と共に、エモーショナルなショーがスタートします。

 ステージ演出の通り、今シーズンはブランド創業者の高田賢三氏のレガシーに敬意を評しながら、Nigoアーティスティック・ディレクター自身のカルチャーを結びつけました。パリのエスプリもあれば、イギリスのシャープさもあり、アメリカの自由な精神もあれば、日本の素朴さもある。そんなあらゆる要素を一つのスタイルとしてまとめる編集力は、シーズンを重ねるごとに磨きがかかっています。1960年代のモッズカルチャーと、80年代のBボーイを融合させたスタイル。さらに日本の剣道着に着想したシェイプも取り入れるという一人世界旅行。「ケンゾー」のシンボルであるボケの花を、英国の伝説的モッズバンド、ザ・フー(The Who)のターゲットグラフィック風に描きます。日本が誇る刺し子の技術をナイロンやデニム、ウールなどに用いて、キャッチーなニュアンスを加えます。

 ザ・ビートルズで個人的に一番好きな曲”I Want to Hold Your Hand”の演奏が始まると、ウルウルしながらショーはクライマックスへ。1月11日に亡くなったYMOの高橋幸宏さんを彷彿とさせる赤いコーデュロイスーツが登場すると、すすり泣く音が聞こえます。過去のムーブメントやカルチャーへの敬意はもちろん、人へのリスペクトを最大限感じたNigoアーティスティック・ディレクターのクリエイションに酔いしれた夜となりました。

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