不動産屋会社の経営者が教える! 選んではいけない「マンションのNG間取り」 – 取材、文・髙倉ゆこ | ananweb – マガジンハウス

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物件探しの際、知っておくと助かるトピックをご紹介。『持ち家女子はじめます』(飛鳥新社)の著者であり、5000人超の女性たちの「幸せになれる家選び」をサポートしてきた「ことり不動産」代表の石岡茜さんに、選んではいけない「マンションの間取り」についてお聞きしました。今回は、活用すれば生活が豊かになる「ベランダ編」です。どんなベランダを選べばいいのか、また、避けたらいいのか、どのように活用すべきか…などを教えていただきました。ぜひ物件選びの参考にしてくだい!

選んではいけない「マンションの間取り ベランダ編」

――まず、基本的なことからお聞きします。ベランダ、バルコニー、テラスの違いについて教えてください。

石岡 一般的に、ベランダは2階以上の物件についた、住戸から外に張り出した雨風がしのげる屋根や庇(ひさし)がある室外スペースのことです。物件によって広さや形はさまざまですが、雨が降っても濡れないエリアがあるため、天候を選ばずに洗濯物が干せるのがメリットと言えます。

一方、バルコニーはベランダと同様、2階以上の物件についた室外スペースですが、屋根や庇(ひさし)がないのが特徴です。日差しを遮るものがない分、ベランダよりも外の光を室内に取り入れやすく、部屋が明るく保たれるのがメリットです。

またテラスとは、1階の部屋から外面にせり出したような室外スペースのことを指します。一般的には、部屋と同じ高さになるように屋外の土地の一部を盛り上げて平らにして作られています。ベランダと同様、屋根はありません。

屋根のない室外空間で、1階にあるのがテラス、2階以上にあるのがバルコニーと覚えておくとよいでしょう。

――大きな違いは「屋根があるかどうか」だったのですね。ここでは、それぞれを区別せず、マンションの室外空間=「ベランダ」で統一してお聞きしていきたいと思います。最近では、「ベランダ不要論」もあると聞きます。それはなぜでしょうか?

石岡 ベランダがあると掃除など維持やメンテナンスに手間や費用がかかるというデメリットがあるからでしょう。また洗濯物に関しても室内干しする人が多く、また洗濯乾燥機が普及したこともあり、「洗濯物を干す場」としてのベランダは必要ないと考える人が増えたことが大きく影響していると思います。

ですが私としては、ベランダはDKやLDKの一角(延長部分)と考えており、お客様にもベランダ付きの物件をおすすめしています。日本の一般的なマンションはどうしても狭い空間になりがちです。少し窮屈な間取りであっても、ベランダがあれば開放感が出て、視覚的にも物理的にもゆとりが感じられると思います。

――なるほど。それでは後悔しない物件選びのために、どのようなベランダを避ければいいのか教えてください。

NG1. 奥行き90㎝以下の狭いベランダ

意外と知られていないことですが、賃貸でも分譲でもマンションのベランダはエントランスやエレベーター等と同じく、入居者全員で利用する共用部分という扱いになります。

「専用使用権」のある共用部分のため、普段は洗濯物を干したり室外機を置いたりと自由に使えますが、災害時には壁を破って隣に逃げるための避難経路となるため、避難の妨げになるようなものは置いてはいけないと消防法で定められているのです。

とくに、自室と隣を隔てる蹴破り戸の前や、避難ハシゴが格納されているハッチの上などに物を置くことは厳禁です。

そのため、あまりにも狭いベランダでは、今流行りの「ベランピング」等ができないどころか、読書用の椅子やプランター植物を置くことさえもままなりません。ベランダには何を置きたいか、どのように過ごしたいかしっかり考えて選ぶことが大切です。

一般的に、築年数が古い物件や1人暮らし用のマンションのベランダは奥行き約90cm、幅約100~120cm、ファミリー向け物件や、築浅の分譲マンションは奥行き100cm以上、幅150~200cmとなっています。

これらを目安に、内見時にサイズを計測したり、ベランダからの眺望や日当たりなどを確認したりしておくと安心でしょう。

NG2. 手すりの高さや強度に不安のあるベランダ

子どもがベランダや窓から転落したという悲しいニュースは後を絶ちません。転落を防ぐためにもベランダのある物件では、必ず、手すりや塀の高さや強度を確認してください。

建築基準法では転落防止の観点から、手すりの高さは110cm以上(できれば120cm以上)であることが推奨されています。また、JIS(産業製品に関する規格や測定法などが定められた国家規格)では、子どもの頭が通らないためにも、手すりの間隔は11cm以下にすることを規定しています。

手すりや塀の高さや、すき間のサイズをしっかり計測するとともに、経年劣化等で強度が弱まっていないかもあわせてチェックしましょう。

これは実際に住んでからの注意点にはなりますが、ベランダには子どもが手すりをよじ登る足場になるような物を極力置かないことも大切です。たとえば、プランター、処分前の雑誌や新聞、段ボール、椅子、おもちゃなど。

またエアコンの室外機は、手すりから60cm以上離して設置するようにしてください。奥行きがないベランダの場合は、子どもがひとりで室外に出られないように窓やサッシに補助錠を付けるなど対策するとよいでしょう。

NG3. 水の使用が禁止されているベランダ

ベランダで植物を育てたい、家庭菜園をしたい、家庭用プールで子どもを遊ばせたい…など。広いベランダがあれば、やってみたいことが増えますよね。それらを実現するためには、ベランダで水が使えることが大前提となりますが、ベランダに水栓がついておらず、水の使用自体が禁止されている物件もあるため注意が必要です。

また水は使えても、排水溝が詰まっていて水はけが悪く、台風やゲリラ豪雨など大雨が降った際に水が逆流し、部屋が浸水してしまった…などという声もよく耳にします。

1でも紹介した通り、ベランダは共用部分という位置付けのため、マンションが定めた規則にのっとって使用しなければなりません。プール使用に関しては、明確に規約で定められていることは少ないですが、暗黙のルールで禁止されている場合もあります。

その物件のベランダで禁止されていることがないか、賃貸物件の場合は不動産会社に、分譲マンションの場合は管理組合や管理会社に問い合わせるか、もしくは入居時に配布される規約を確認してみてください。

Information

<教えてくれた人>
石岡茜さん。2013年に「女性のための不動産会社を作りたい」と、東京・学芸大学に「ことり不動産」を設立。女性ならではの細やかな視点と「幸せな家選び」をモットーに、物件選びをサポートしている。宅地建物取引士。著書に『持ち家女子はじめます』(飛鳥新社)がある。

取材、文・髙倉ゆこ

©studio marble/Getty Images

取材、文・髙倉ゆこ

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