名作絵本図書館──生まれて初めて出会う本。

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December 6, 2022 | Culture, Art, Design | 名作絵本図書館

テーマ&ジャンル別に名作絵本をセレクトしました。まずは、出産祝いにも選びたいファーストブックから。声に出して読めば、生まれたばかりの赤ちゃんも笑い出すかも…?

言わずと知れた赤ちゃん絵本の代表作、『いない いない ばあ』。文:松谷みよ子 絵:瀬川康男(童心社)

踊るようなリズムに繰り返しのフレーズ、愛嬌あふれるキャラクター…生まれて初めて触れる絵本は、目に耳に楽しいものを選びたい。まだまだ言葉はわからないと思っていたのに、何度も読み聞かせるうちに同じところで笑ったり、キャラクターと同じ仕草をしたり…赤ちゃんをぐっと引き込んでしまうような不思議な引力を持った絵本をご紹介します。鮮やかな色彩と明快なデザインも、赤ちゃんの目を引きつけます。

■ 赤ちゃんのための、厳選8冊。

『ちいさな うさこちゃん』うさこちゃん、はじまりの一冊。

文・絵:ディック・ブルーナ 訳:いしいももこ(福音館書店)880円/1964年

簡潔な輪郭線とくっきりとした色彩、その単純化された美しさは誰が見てもディック・ブルーナの絵だとわかる。オランダ生まれの芸術的絵本を日本へつないだのは、児童文学の第一人者である石井桃子。原題『nijntje(ナインチェ)』の柔らかい響きをそのままに「うさこちゃん」と訳した。このシリーズ’作目では、うさこちゃん誕生の物語が日本語の美しい音とリズムによって紡がれている。

『いない いない ばあ』日本が誇るベスト&ロングセラー。

文:松谷みよ子 絵:瀬川康男(童心社)770円/1967年

発売から47年、540万部を超える日本で一番売れている絵本。松谷みよ子のゆったりとした語りかけ口調で、動物たちが次々と此いないいないばあをしていく。絵の具の微妙なにじみ具合や濃淡が作り出す味わい深い動物たちは、典具帖という薄い和紙の上から描く瀬川康男オリジナルの描法で作られたもの。ワントーン暗くしたような絵や紙の質感が、赤ちゃんの透明な目に穏やかに映る。

『おつきさまこんばんは』夜空に浮かぶまんまるお月様とのドラマ。

作:林 明子(福音館書店)880円/1986年

『はじめてのおつかい』『あさえとちいさいいもうと』など筒井頼子との共作がロングセラーとなっている絵本作家・林明子。子供の柔らかさや匂いまで伝わるような絵と、子供目線で描かれた物語が長く愛されている。ただ「月が雲に隠れてまた出てくる」という自然現象が、子供のレンズを通すとこんなにもドラマチックになるから不思議。裏表紙のお茶目なお月様にも注目。

『しーっ』しずかにしてください、その優しい理由。

作・絵:たしろちさと(フレーベル館)770円/2012年

2003年、世界に名高い絵本編集者のマイケル・ノイゲバウアーに見いだされ、『ぼくはカメレオン』で世界%%か国で同時デビューした絵本作家・たしろちさと。表情豊かでユニークな動物たちが「しーっ、しずかにしてください」「なぜかっていうとね……」。この繰り返しが子供の好奇心をくすぐる展開。思いやりや優しさが連鎖していく物語は、0歳から繰り返して聞かせたい。

『あいうえおえほん』美しいひらがなとの素敵な出会い。

作:とだこうしろう(戸田デザイン研究室)1,980円/1982年

教科書体をもとに描かれた大きな「あいうえお」とシンプルで鮮やかな絵が並んでいる。まだ文字を知る前の子供は、それをただ「美しい形」として感じる。指でたどったり似た形を探したりと、文字との出会いとして最適な一冊。ストーリーはないように見えて、最後の「を」は「ろうそくの火を消しておしまい」。これでパタンと閉じて、また最初から見たくなるようにできているところも秀逸。

『じゃあじゃあ びりびり』言葉と音を楽しむ赤ちゃん絵本。

作:まついのりこ(偕成社)660円/1983年

この絵本は、まず丸くカットされた縁を噛んだりなめたりして味わうらしい。作者の意向で赤ちゃんが自分で持って楽しめるようにと、%4㎝角の丈夫なボードブック仕様になっているので、自分でページをめくることにも挑戦できる。無駄な線を省いた切り絵に、物の名前と擬音が結びついたリズムが赤ちゃんの興味を惹きつける。イラストに合わせて自由に配置された文字も楽しい。

『BABY NUMBER BOOK』リサ・ラーソン、初めての絵本。

作:リサ&ヨハンナ・ラーソン(パワーショベル)990円/2010年

スウェーデンを代表する陶芸アーティストであるリサ・ラーソンが手がけた初めての絵本は、デザイナーである愛娘ヨハンナとコラボレーションした、数を覚える絵本。よく見ると並んだ動物たちには微妙な違いがあり、間違い探しとしても遊べる。色の絵本『BABY COLOUR BOOK』や人気キャラクターの猫のマイキーが夜の街へと飛び出す『Night Cat』も飾っておきたいくらいかわいい。

『がたん ごとん がたん ごとん』声に出して読みたい心地よい擬音の数々。

作:安西水丸(福音館書店)880円/1987年

まだ視力の弱い赤ちゃんの目にもくっきり映る黒い汽車は、特殊なカラーシートを切り貼りして描かれたもの。次々と汽車に乗る哺乳瓶やコップなどもほのぼのと親しみやすく、「がたんごとん」の繰り返し言葉が耳にも心地よい。発売から20年以上を経て、続編『がたん ごとん がたん ごとん ざぶん ざぶん』が発行された。表紙には青のラインが入り、いっそう鮮やかに。