名作絵本図書館──おやすみなさいの本。

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December 7, 2022 | Culture, Art, Design | 名作絵本図書館

テーマ&ジャンル別に名作絵本をセレクトしました。毎日のスムーズな就寝は子供にとってとても大事。親にとってもそうかもしれません。楽しく、気持ちよく眠りにつくための絵本をご紹介します。

美しいイラストで世が更けていくさまを描く。『おやすみなさい おつきさま』作:マーガレット・ワイズ・ブラウン 絵:クレメント・ハード 訳:せたていじ(評論社)

起きて、遊んで、ご飯を食べて、お風呂に入って、歯を磨いて、また眠って…子供は、毎日同じリズムで生活し、健康な体内時計を育てることがとても大事。しかしスムーズに眠りについてもらうためには、お父さんとお母さんの血のにじむような努力が必要なこともしばしば。明日の朝も早いのになかなか寝てくれない…そんなときは絵本の力に頼りましょう。夜が更けていくさま、眠りゆくさま…やわらかく美しく描かれたイラストと耳に心地よいリズムで、今日もいい夢見れるかな…。

『おやすみなさい おつきさま』眠りへの階段をゆっくりひとつずつ。

作:マーガレット・ワイズ・ブラウン 絵:クレメント・ハード 訳:せたていじ(評論社)1,320円/1979年

大きな緑の部屋で始まる、静かなおやすみの儀式。マーガレット・ワイズ・ブラウンと、彼女が信頼を寄せていた画家クレメント・ハードの作品。アメリカでは1947年から読み継がれているおやすみ絵本の定番。眠るときに心細さを感じる幼い子供に寄り添う優しい気持ちにあふれている。この二人の共作で、揺るぎない親子の絆を描いた『ぼくにげちゃうよ』も合わせて読みたい。

『ねないこ だれだ』怖いけど見たくなる、せなけいこの傑作!

作・絵:せなけいこ(福音館書店)770円/1969年

せなけいこ独特の切り絵の雰囲気と母親の視点で作られた物語は、怖くて、面白くて、クセ者揃い。いつの時代も子供のハートをつかんで離さない作品ばかりだ。誰もが見たことのある、黒い背景にくっきり浮かんだ白いおばけと、おばけにされて連れていかれるという衝撃のラストシーンが忘れられないこの一冊も、子供の好奇心や怖いもの見たさをうまく突いた傑作絵本。

『おやすみなさい フランシス』寝かしつけは親子の知恵比べ!?

文:ラッセル・ホーバン 絵:ガース・ウイリアムズ 訳:まつおかきょうこ(福音館書店)1,210円/1966年

あなぐまの子供のフランシスは、ベッドに入ってもちっとも眠れません。なぜなら…。次から次へと出てくる「眠れない理由」が、子供らしくほほえましくて共感できる。フランシスのお父さんとお母さんの受け答えも見事。柔らかな鉛筆と淡いグリーンの2色で描かれた挿絵にも癒される。同じシリーズに『ジャムつきパンとフランシス』『フランシスのおともだち』などがある。

『よるくま』現実と夢の間にある、ぼくの冒険物語。

作:酒井駒子(偕成社)1,100円/1999年

人気作家・酒井駒子の代表作のひとつ。ベッドの中でぼくがママに話す冒険物語。真っ黒な夜の縁取りの中に描かれた絵は、色鮮やかでファンタスティックだ。ぼくとよるくまが探していたくまのお母さんは、実は魚釣りの仕事をしていたという展開はリアリティーがあり、現代の母子の関係を表しているよう。男の子の優しい語り口調が読み手を癒し、いつの間にか夢の中に誘ってくれる。

『おやすみなさいのほん』安らかな眠りに誘うやさしい言葉たち。

文:マーガレット・ワイズ・ブラウン 絵:ジャン・シャロー 訳:いしいももこ(福音館書店)1,210円/1962年

42年の短い生涯の中で、絵本のための美しい文を数多く世に送り出したマーガレット・ワイズ・ブラウン初期の作品。ジャン・シャローの太く力強く描かれた絵とは対照的に、文章では生き物たちが順々に眠りにつく様子を丁寧に繊細に描写している。繰り返す「ねむたい〇〇たち」のフレーズが催眠術のように心を穏やかにし、最後はいつも誰かに守られている安心感を胸に、眠りにつける。