団地の聖地・赤羽台に名作住戸が蘇る。〈URまちとくらしのミュージアム〉がオープン。

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November 25, 2023 | Architecture | a wall newspaper

都市再生機構(UR)の団地の歴史をたどる〈URまちとくらしのミュージアム〉が東京・赤羽台に誕生! 復元住戸に入って当時の暮らしを追体験できます。

〈URまちとくらしのミュージアム〉外観。完全予約制のツアー見学制。「スターハウス」は外観のみ見学できる。

どこか懐かしい団地。その多くは戦後の急激な経済成長や都市化による住宅不足を補うため、1955年に設立された日本住宅公団(現・都市再生機構。略称UR)によるものだ。旧赤羽台団地の一角に開館した〈URまちとくらしのミュージアム〉はその歴史をたどるもの。設計組織ADH(渡辺真理+木下庸子)が設計したミュージアム棟に、前川國男が設計した〈晴海高層アパート〉など4つの地区・団地の6住戸が復元され、模型や部材などとともに展示されている。

敷地内にはミュージアム棟のほかに「スターハウス」と呼ばれるY字形の団地や彫刻家・流政之デザインのベンチや庭園灯などが保存されている。多くの人に良質な住宅を、との思いから生まれた団地がいかに工夫されていたのかをツアーで学べるミュージアムだ。

■ 同潤会代官山アパートメント|1927年、関東大震災の復興のために建てられたアパート。

世帯用の住戸。室内は基本的に和風だった。現在は渋谷区の「代官山アドレス」になっている。
玄関は防火のため木の扉に鉄板を貼っている。右上は避難ばしご。

1923年の関東大震災の復興のため設立された財団法人同潤会によるもの。地震や火災に強い鉄筋コンクリートの集合住宅を16か所につくった。このミュージアムには写真の世帯住戸のほか、単身住戸が復元されている。コミュニティ形成のための中庭のほか、共同の浴場や食堂、店舗などを備えた、小さな街のような集合住宅だった。

■ 蓮根団地|「食寝分離」を実現した2DKの間取り。

ダイニングキッチン。椅子で食事をする生活を促進するため、ダイニングテーブルが備え付けられていた。流し台はステンレス製が生産されていなかったため、人造石の研ぎ出しとなっている。

1957年に入居開始した、日本住宅公団初期の団地の2DKの住戸。1つの部屋にちゃぶ台を出して食事をとり、布団を敷いて寝る生活から、寝室と食事の部屋を分ける「食寝分離」を実現した。銭湯が主流の時代に内風呂がついていたのも魅力だった。

■ 1958 晴海高層アパート/前川國男が設計した高層集合住宅。

畳は長辺が5割長い特注品。窓や欄間も障子の正方形の桟に合わせてデザインされている。
ダイニングには前川の師、ル・コルビュジエの絵が飾られている。

前川國男が設計した公団初期の高層集合住宅。エレベーターは1・3・6・9階にのみ停まり、その他の階には階段でアクセスするスキップ方式だった。

■ 1958 多摩平団地テラスハウス/専用庭で遊べる低層集合住宅。

1階和室と奥に台所を見る。専用庭は垣根が低く、隣戸とのコミュニケーションも盛んだった。

テラスハウスとは専用庭のある長屋形式の低層集合住宅。昭和30年代の郊外で多くつくられた。これは1階に和室とステンレス流し台のある台所・浴室・トイレ、2階に和室が2つある3Kのタイプ。この復元住戸の横には前川國男設計のテラスハウス〈阿佐ヶ谷住宅〉の資料が展示されている。

同潤会アパートや公団住宅で使われてきた部品の展示コーナーも。

〈URまちとくらしのミュージアム〉

完全予約制。「スターハウス」は外観のみの見学。東京都北区赤羽台1-4-50。水曜・日曜・祝日休。入場無料。予約は公式サイトにて。