厄除けを願う「笹かざり」。花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」 Vol.62 | & Premium (アンド プレミアム)

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四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。

 

厄除けを願う「笹かざり」。

山鉾巡行や神輿渡御は行われず、静かに終わった今年の祇園祭。ただ疫病退散を祈願する神事や行事には例年に増して想いを込め、粛々と執り行われたという。1200年にわたり都であり続けた京都には、幾度となく疫病や災難に襲われた過去がある。厄除けを願う行事が数多くあるのも歴史の長さゆえ。祇園祭をはじめ節分の追儺式(ついなしき)や、夏越(なごし)の祓(はらえ)などもそうだ。
例年8月22日、23日に行われる六地蔵めぐりも疫病退散に由来する。平安初期の公卿・小野篁(おののたかむら)は熱病を患い生死をさまよった際に、冥途で地蔵菩薩と出会う。地獄の苦しみと自分のことを人々に伝えてほしいと告げられ、篁は蘇ったのち桜の大木から6体の地蔵を彫って祀った。やがて平安後期となって後白河法皇の命を受けた平清盛が、災難から守るため都の出入り口にお堂を建て、その地蔵菩薩を祀ったのが六地蔵めぐりの始まり。それぞれの寺院で授与される5色のお幡(はた)は、6枚束ねて吊るすことで疫病退散や無病息災の御利益があるという。
京都の七夕は旧暦で行われるため、今年は六地蔵めぐりと日が近い8月25日に。笹飾りをお幡にちなんだ5色の短冊で仕立て、厄除けの気持ちをそっと込めたものとなっている。

photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2020年10月号より。


花屋 みたて

和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。

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