映画ジャーナリスト猿渡由紀の“年末年始に明るい気持ちになる映画”4選   泣ける話題作から隠れた傑作まで

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 「WWDJAPAN」で連載「エンタメから読み解くトレンドナビ」を執筆する映画ジャーナリストの猿渡由紀が、年末年始におすすめの映画を紹介。普段忙しい人たちにとって、年末年始は自宅で映画をゆっくり観るいい機会だ。ここで登場する4本は、どれも新年を明るい気持ちで迎えられそうな作品ばかり。見逃していたかもしれない隠れた名作を、ぜひ家族みんなで楽しもう。

「幸せなひとりぼっち」

 2015年公開の「幸せなひとりぼっち(En man som heter Ove)」は、アカデミー賞外国語映画部門(現:国際長編映画部門、Academy Award for Best International Feature Film)にもノミネートされたスウェーデン映画。アメリカではつい最近、トム・ハンクス(Tom Hanks)主演のハリウッドリメイク版が公開になったばかり。オリジナル版のプロデューサーが携わっていることから、本作はオリジナル版にとても忠実で、セリフまで同じシーンをところどころに見ることができる。それでもまた泣けてしまうのは、ストーリーそのものがすばらしいのと、どちらの作品においても演技が最高だからだ。
 
 主人公のオーヴェ(Ove)は、お堅くていつも不機嫌。でも、昔からずっとそうだったわけではない。本作は、彼の若いころと今を行ったり来たりしつつ、ユーモアを混ぜ込みながら、彼がどんなことを経験してきたのかを描いていく。彼の心を開かせるのは、意外にも、近所に引っ越してきた移民の女性。一見共通点のないこのふたりの心の触れ合い、人種、国境を越えた友情の美しさに、強く心が動かされる。

 ハンクスのリメイク版は日本では2023年1月13日に公開予定。その時にはきっと話題になるはずだから、今のうちにオリジナル版を見て一足先に予習しておきたい。

「デリシュ!」

 今年9月に日本公開されたフランス映画「デリシュ!(Delicieux)」は、思わぬ素敵な発見。舞台はフランス革命前夜の1789年で、まだレストランというものがなかった時代だ。主人公マンスロン(Manceron)は、シャンフォール(Chamfort)という公爵の専属料理人。文句のない腕の良さを認められている彼は、食事会で創作料理を出したことから保守的な貴族たちの笑い物にされ、屈辱を受けたシャンフォール公爵からクビにされてしまう。田舎に戻り、料理への情熱を完全に失ったマンスロン。そこへ、彼から料理を習いたいという謎の女性ルイーズ(Louise)が現れた。そのルイーズの手助けを得て、マンスロンは庶民に向けた食事処をオープンする。そんな中、マンスロンに勝る専属料理人を見つけられないでいたシャンフォール公爵は、彼の食事処を訪れると言い出す。その特別な日のために、マンスロンとルイーズは一生懸命準備をするのだが……。
 
 貴族の態度にはいら立つが、この話の後に彼らに起こることを考えると爽快。料理のショットはもちろんのこと、まるで絵画のような風景も美しい。

「ハッスル」

 「ハッスル(HUSTLE)」は、今年6月にネットフリックス(NETFLIX)で配信されたアダム・サンドラー(Adam Sandler)主演のスポーツ映画。アメリカの映画批評ウェブサイト「ロッテントマト(Rotten Tomatoes)」で93%を得るほど高評価を獲得し、このアワードシーズンにネットフリックスはサンドラーのために主演男優部門推しのキャンペーンをしている。

 サンドラーが演じるスタン(Stan)は、NBAのフィラデルフィア・セブンティシクサーズ(Philadelphia 76ers)のスカウトマン。オーナー(ロバート・デュヴァル、Robert Duvall)から強い信頼を得ている彼は、アシスタントコーチに昇格するも、その途端、オーナーが突然死してしまい、権力は出来損ないの息子ヴィンス(ベン・フォスター、Ben Foster)に移る。そんな中、スタンはスペインにいる間、無名の才能あふれるプレイヤーを発掘した。興奮したスタンは彼をアメリカに連れてくるが、ヴィンスの意地悪な妨害に直面することになる。
 
 いわゆる“アンダードッグ(負け犬)”ストーリーで、最後にはうまくいくのだろうと分かってはいながら、十分にドキドキさせてくれて、楽しませてくれる。実際のNBAプレイヤーが出演するのも、試合のシーンにたっぷりとリアリティを与えている。

「おやすみ、オポチュニティ」

 「おやすみ、オポチュニティ(Good Night Oppy)」は、今年11月下旬にアマゾンプライムビデオ(Amazon Prime Video)で全世界配信されたドキュメンタリー。スティーブン・スピルバーグ(Steven Spielberg)のプロダクション会社アンブリン・エンターテインメント(Amblin Entertainment)が製作に関わっているという事実からも、本作が優しさに溢れるものであることは想像がつくはず。特殊CGを手掛けるのは、ジョージ・ルーカス(George Lucas)が創設した特殊効果&VFX制作会社インダストリアル・ライト&マジック(ILM)で、女優アンジェラ・バセット(Angela Bassett)がナレーションを務める。

 タイトルの“オポチュニティ”とは、火星の探索のため、科学者たちが開発したロボットのこと。送り込むだけでも奇跡だったこのロボットは、90日しかもたないはずだったのに、15年も活躍することになった。人類が持つ好奇心と絶え間ない努力に強く心を打たれ、とても前向きな気持ちにさせられる。ナサ(NASA)の宇宙開発計画をテーマにした実話にもとづく「ドリーム(Hidden Figures)」(2016)が好きな人なら気に入るはず。

 「アカデミー賞(Academy Awards)」のドキュメンタリー部門で本命かと言われていながら、先日発表されたショートリストから漏れて、その希望はなくなった。しかし、先月の放送映画批評家協会(Critics’ Choice Awards)によるドキュメンタリー賞で長編映画部門を含む5部門を受賞しているほか、いくつかの批評家賞から受賞、さらに候補にも入っている。

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