経理/労務の最前線!2023〜プロが予測!年初めに1年のトレンドを完全把握〜|バックオフィスの日2023 in 大阪 レポート

バックオフィスの日2023 in 大阪
会期:2023年6月21日(水)
会場:梅田クリスタルホール
主催:freee株式会社

会計・人事労務・業務効率化など経営を支えるあらゆる業務の最先端が一同に会するイベント「バックオフィスの日」。昨年1月に大盛況だった東京での開催をふまえ、6月21日(水)に「バックオフィスの日2023 in 大阪」として初めての大阪での開催となった。

今回は3コマ目に行われた「経理/労務の最前線2023〜プロが予測!年初めに1年のトレンドを完全把握〜」の内容をご紹介する。

法規制の改正をバックオフィス業務改善のチャンスと捉える

スピーカー:白木淳郎氏(BesoGroup創始者)

みなさんこんにちは、白木と申します。よろしくお願いします。今日は「経理/業務の最前線」ということで、新しい法規制を含めてどう対応していくかというところについてお話しさせていただければと思っております。よろしくお願いします。

まずは簡単に会社の紹介をさせていただければと思います。弊社はBesoGroupと言いまして、税理士事務所のグループを創設している株式会社です。大阪を拠点として、総勢20名弱のメンバーでやっています。

事業内容としては、税理士事務所向けのDXを開発し販売していて、建設業向けにアプリも作っています。もし建設業の方がいれば、無料で使えるのでぜひご活用ください。 あとは「freee」の導入支援を行っていて、過去にも大きな実績があります。「freee」を使った税務とバックオフィスのDXを掛け合わせて、コンサルティングでいろんな会社さんをサポートしてきました。これが簡単な会社紹介となります。

私の自己紹介もさせていただきます。今、38歳の大阪生まれ大阪育ちです。元々は26歳までプロ野球選手をしていて、独立リーグや欽ちゃんのチームでも活動していました。引退後は税理士業界に転向していろんな事務所を経験し、2019年に独立して、DXのバックオフィスのコンサルティングや税理士事務所向けの開発の推進をしています。

本日のアウトラインですが、基本的には法改正についてを中心にお話しさせていただきます。深く話せば話すほど細かい話になっているので、今日は浅い話になるかなと思います。後半には、法改正に対してどう対応していくかについてを重点的にお話しします。

インボイス制度についておさらいする

まずはここ2年、直近の法改正の動きについてです。時間外労働においては、2023年4月に見直しをはかっている状況ですし、この後はインボイス制度も始まります。インボイス制度の開始から遡って色々準備することが多いというのが印象的なのではないでしょうか。そのため、DX化にはどれぐらいの時間がかかるかとか、そのあたりも含めてお話しできればなと思っております。

ご存知の方もいると思うのですが、そもそもインボイス制度はどういうものなのでしょうか。基本的には、インボイスとは適格請求書に一定の事項を記載した請求書や領収書のことです。

インボイス制度はなんのためにするのかというと、正確な税率や税額を伝えるためです。制度の開始は、2023年10月です。

それではインボイス制度に関してどんな対応をしないといけないのかというと、売り手さんと買い手さんとで対応が分かれてきます。まずは売り手の方、請求書発行側からお話しできればと思います。

売り手側の対応として、まずはじめにインボイスの登録申請を行います。2023年10月1日からインボイス制度を開始し提供しようと思うと、2023年9月30日までには登録申請を完了しておかないといけません。そのためには登録申請書を作成し税務署に提出し、それを受理してもらって、通知を受け取るという流れになっています。申請が行われてから登録されるまでにだいたい3週間ぐらいかかります。そのため、遅くとも9月頭までには登録申請をしていただければと思います。

通知書を受け取った際には登録番号が記載されています。基本的には「T+法人番号」という形での記載です。

売り手側の対応として2つ目に挙げられるのが、消費税の端数処理の見直しです。今までは請求書での消費税の端数処理のルールが決まっておらず、各行ごとに端数を処理することが可能でした。今後は各行ごとの端数処理が認められないことをご注意いただければと思います。

処理すること自体は簡単なのですが、請求書のフォーマットを変更しないといけません。取引先との関わりもあるでしょうから、フォーマットの準備はなるべく早くしていただくのが良いかなと思います。あとは、営業さんがいる会社であれば、営業さんに対しても通知していかないといけないので、社内での整備にも時間がかかってくることもご認識いただければと思います。

また、適格請求書のほかに、適格簡易請求書(簡易インボイス)というものがあります。これは何かというと、記載項目が簡易的になった適格請求書のことです。どのような方が対象になってくるかというと、基本的には不特定多数の人に対して販売を行う小売業や飲食店、タクシー業などの方々ですね。特徴としては、「書類の交付を受ける事業者の氏名や名称の記載が不要」という点です。その他は適格請求書とほぼほぼ内容的には変わりません。

そのほか、適格返還請求書(返還インボイス)もあります。これは何かというと、返品や値引きといった売り上げの対価にかかる返還を行う際に、売り手が買い手に対して交付するものです。適格返還請求書が発生した場合、1回分ずつを全て返品の欄に書かないといけないわけではなく、まとめての対応が可能となっています。ただ注意点としては、1万円以内の返品や値引きについては、返還インボイスが不要となります。

また、適格請求書に関し、3万円未満の運賃などについてはインボイスの交付義務が免除されます。

そして、インボイスの写しの保存が必要となります。そういったことをふまえると、紙での運用は非常に手間がかかるので、電子化も視野に入れていかなければいけないと思っております。適格請求書だけではなく、返還請求書についても写しの保存が必要となります。また、電子で送ったものに関しては、電子で保存して良いという要件もあります。

続いては買い手側のインボイス制度への対応についてお話しします。

まず、「売り手が適格請求書発行事業者か否かを確認する」必要があります。取引先がそもそもインボイスの登録がされているかどうかは重要です。もし確認できない場合は、請求書登録番号を控えていただき、国税庁のサイトで検索をしていただくと、事業者が表示されればインボイスの登録がされていることになります。これで適格請求書事業者か否かを確認することができます。

2つ目として、「必要事項が記載されたインボイスかどうかを確認する」必要があります。10月1日にインボイス制度が始まる前にどういうフォーマットを使うのかということも取引先に確認しておくと、スムーズに進むかなと思います。また請求書に間違いがあった場合、買い手側が修正するのではなく、売り手側が再発行しないといけなくなります。こうした法改正により、新たな手間が発生してしまうことも注意が必要なポイントです。

3つ目として、「受領者インボイスの保存」が必要となります。現行では1回の支払いが3万円未満の請求書や領収書は、領収書がなくても帳簿への記載を行うことで消費税の仕入れ税額控除が認められました。ECサイトでの取引では電子化されたレシートを保存することが要件だったのですが、基本的にこういうインボイスは全て保存していただければと思います。

例外規定として、交通費や郵便物などに関してはインボイス保存をしなくていいというケースがあります。しかし基本的には、インボイスを保存しておくことを今の時点から心がけていただけると良いと思います。

買い手側のインボイス制度への対応として最後に挙げられるのが、「経過措置をした記帳」です。これに関しては、バックオフィスの経理の方にとって非常に煩雑になるかなと思っております。

インボイス制度開始の10月1日からは免税事業者からの仕入れであっても、仕入税額控除を受けられるというものが、経過措置です。

基本的には2023年10月から3年間、免税事業者の仕入れにつき80パーセントの控除が可能になります。さらに2026年10月から3年間は50パーセントの控除が可能となるので、10年間の経過措置がとれるような形となっています。税率的には非常に優遇されるのですが、経過措置に関する処理に影響が出てきます。

現行の記帳では、税区分で言うと10パーセント、軽減税率が8パーセントと混在してるような請求書や領収書もありますよね。

これだけでも結構手間がかかる感じがするんですが、インボイス制度が開始された後は、まずこの10パーセントと8パーセントの混在にプラスして、2023年10月から2026年9月30日までの経過措置80パーセント。 さらに、2026年10月から2029年9月30日までの経過措置に関しては、50パーセントの経過装置が適用されます。こういったものを、記帳する際に分けるのが手間になっていくと思います。

変化した電子帳簿保存法のポイント解説

ここからは話が変わりまして、電帳法(電子帳簿保存法)のお話をできればと思っております。

まず電帳法の対応に関してなのですが、基本的には見積書や請求書、領収書、あとは契約書に関して、紙のものと電子データとなっているのが税務関係帳簿書類として扱われます。

紙のものに関しては、基本的にスキャナで保存していただくか、撮影していただいて保存することが必要となります。電子帳簿は、電子的に作成した帳簿や書類をデータのまま保存します。

そして電子取引データの保存については、メールやECサイトでダウンロードして受け取るような、請求書や領収書が対象となります。

今回の法改正では、どのような見直しがされたのでしょうか。電子取引のデータに関しては、全ての事業者が電子データで保存しなければいけないことになりました。そのため電子データに関しては、「freee」さんなどを使っていただいて保存していただきたいと思います。

ここからは法改正のポイントを5つ解説します。

まず1つは、「事前承認制度の廃止」です。今までは電子帳簿を使う際、事前に直轄の税務署長に申請をしないといけませんでした。法改正によって廃止されたので、電子帳簿を使うことへのハードルが下がりました。

2つ目は「スキャナ保存のタイムスタンプ要件の緩和」です。これまでは3営業日内が期限でしたが、最長2か月になったので非常に使いやすくなったかなと思います。

3つ目が「電子取引における電子データ保存の義務化」です。紙に印刷して保存していた書類は全て廃棄していただいて大丈夫です。そのため、紙の山が残ることはないかなと思います。紙で保存しておかないといけないと、管理コストがかかってきてしまうので、どんどんスキャンして保存していただければ、コスト削減にも繋がります。

4つ目が 「検索要件の緩和」です。電帳法で保存した書類に関して、「取引年月日」「取引金額」「取引先」で検索ができるため、この3つを検索要件として保存しておけば問題ありません。このような要件ですぐに検索できるようなクラウドを揃えた環境で対応していただくのがおすすめです。

5つ目は「電子取引データの厳格な保存」です。電子取引に関しては保存が必須要件となりました。

時間外労働について

ここからは労務の話になります。すでに適用されているので事後の説明になるのですが、基本的に時間外労働が月60時間を超える場合、割り増し支払い率を50パーセントに変更する必要があることが大きな変更点です。

以前は大企業だけが対象だったのですが、中小企業も対象になりました。人件費がどのくらいかかるかによってどうしてもコストも変わってきてしまうところがあるので、もう一度、効率化に関する企業努力をしなければいけないと考えています。

もう1つ、2024年4月からスタートするのが、時間外労働の上限適用猶予の終了です。今までは特定の業種においては関係なかったことなのですが、規制が適用されるようになります。

今までは工作物の建設事業、自転車運転のほか、病院や診療所に関する事業や業務が猶予の対象になっていました。法定時間外労働の上限はどうしても守らないといけないことになっているので、今後時間外労働と休日労働に関する協定届けを確認する必要があります。各事業や業務ごとに取り扱いが変わってきますので、こういったところに該当する方に関しては注意が必要です。

法改正に対応することで働く環境を良くしていく

ここまで法改正の話をざっとさせていただいたんですが、変更点のお話だったので「えー、そうなの」と思われたでしょう。なぜ法改正に対応しないといけないのかについてもお話しできればと思います。

特に中小企業に関しては、労働人口が非常に減ってきていると実感しております。加えて、生産性に改善の余地があること。そしてDX化に際しての人材が足りないこと。この3つがあいまっている状況で、DXの改革をして生産性を上げて労働人口の減少に対応していかなければいけません。これが今後中小企業として発展していくためのポイントであり、法規制と合わせて取り組むべき日本の課題だと感じます。

ぜひこの機会に取り組んでいただければいいかな、と思っております。

働き方改革の法案などで、インボイス制度はまさにバックオフィス業務を圧迫するような法改正だと思っております。自分たちが関わっている税理士業界でも、どうするどうするというお話が結構出ているのを実感しています。

ぜひこの機会に、バックオフィスのDX化に取り組んでいただければと思っています。ここからは、具体的にDX化をどう進めていくのかについてお話しします。

バックオフィスをDX化する手順

実際にいろんな企業さんを支援し、特に「freee」さんを導入して業務改善をしてきた背景には、いくつかのステップをたどることが基本にありました。プロジェクトのスケジュール感を踏まえると、半年から1年ぐらいはかかると見ておいた方がいいかなと思っています。

まず「freee」さんを導入した後にもたもたしがちなケースとしては、プロジェクト体制が崩れてしまって、導入を進める人が誰もいなくなったということです。まずプロジェクトに対して社内で誰をアサインさせるかが重要になってきます。もし、社内に適任者がいない場合は社外の専門家を頼るというパターンも活用できるでしょう。

社内の業務を可視化することも大切です。普段はなかなかしないと思うのですが、業務を可視化することで、現状で行っている業務がどこにどのくらい時間かかってるかが明確になります。さらに法改正についても理解していただいて、ITツールを選定していただければと思います。

業務の構築に関しては、既存の業務フローで回してしまうと、どうしてもSaaSのカスタマイズ性が低いというポイントがネックになります。そのため、ツールに業務内容を合わせていただくことが必要です。 基本的にはできるだけ標準化することを焦点にプロダクトが作られているケースが多いので、その規定に合わせて業務を構築していていただければと思います。

余談にはなりますが、利益化に活用できる助成金も多数出ているので、ぜひご確認ください。注意点としては、補助金や助成金があるからすぐにツールを導入しようとするケースです。そうしたケースに関しては導入失敗に終わることが多いので、まずはそもそもなぜバックオフィス業務を変更しなければいけないのかという目的に立ち返っていただければと思います。

DX化で生産性を向上させ、自由に働ける環境づくりを

企業のバックオフィス人材は今、すごく大きな課題を抱えていると考えています。

それこそ1人の経験で回している企業さんもありますし、人が足りないとか、バックオフィスにコストを割けないという企業さんも結構います。

まずはリスクを解消するために、この機会にDX化で生産性を向上させ、働いてる方が自由に働ける環境が必要になってくると思っております。例えばその都度出社して働くというケースも必要ですが、働いている方が自由に働いていけることが、今後の会社や企業が取り組むべきところだと思っております。本日のお話はこれで終わりにしたいと思います。ありがとうございました。